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歯の解放 [咬合と咀嚼]

歯の解放

 現在に至るまで,地球上には多くの生物種が繁栄と滅亡をくり返してきた。

 このことについて誰もが興味を持つのが,ハ虫類であった恐竜の中生代における繁栄と滅亡であろう。

 恐竜滅亡の原因については,諸説あるがここでは触れない。しかし,恐竜という生物が生命を終えるのは,不測の事故(たとえば闘争などによる外傷)を除けば,老衰あるいはエネルギー不足による衰弱と考えられる。

 恐竜という種の滅亡と,恐竜という個体の終焉を同一にはできないが,個々の個体の持続的な減少が全体としての恐竜種の滅亡につながったのであろう。

 恐竜が生活していた中生代は,われわれが生活している現代よりも,気候的には暮らしやすかったのではないだろうか。

 地球が動物に優しくなくなって,そしていくつかの種が滅んでいった,と考えるのはどうでしょうか。

 少ない食物から,十分なエネルギーを引き出せることは,地上にその種の個体数を増やすには,おそらく最適の方法ではないだろうか。

 人間が地上を支配しているのは,エネルギー源としての食料を自分の手で作り出す(農耕)能力があるばかりでなく,人間の持っている食物からエネルギーを引き出す方法が,他の動物に比べてひじょうに効率がいいからではないだろうか。

 エネルギーを引き出してくる過程は内呼吸であるが,その前に小腸での吸収があり,さらにその前に胃から始まる消化の過程があり,遡ると口の中での歯による咀嚼から始まっていることに気がつく。

 このようにエネルギーの獲得の過程を眺めると,はじめの窓口である咀嚼器官が重要な位置を占めている。

 つまり,生命を維持するためのエネルギー源である食物(エサ)を食べる営み(捕食行動あるいは摂食行為)が,いかに合理的に行なわれるかが動物の種の繁栄および維持のためにひじょうに重要な歴史的課題であった。

 歯医者だから,何事も咀嚼とか歯とかに結びつけているように感じられるかもしれないが,動物がそれぞれの食性に応じた咀嚼器官の構造を備えている重要性は,再考していただければ歯医者の独断でないことは頷いてもらえると思う。

 咀嚼の重要性は,現存する動物において,その咀嚼器官の形態と消化の様式を考えると分かると思う。

 セキツイ動物のハ虫類以下の動物では,食物(エサ)は丸飲みしている。この場合,歯や顎の構造は単純な形態をしている。

 つまり,ハ虫類の咀嚼器官は,食物をエネルギー効率がよい状態にまで処理するという役目を果たしていない。単に食物としての獲物を捕獲するための手段である。

 食物となる獲物をくわえたら,それを落とさないように,あるいは逃げ出していかないように,しっかりと咬んで押さえつけておかなければならない。

 肉食性の恐竜であるティラノサウルスは,その歯はギザギザで,あれに噛みつかれた二度と逃れることはできない恐怖を覚える。

 もう一つ,歯は,種内あるいは種間の闘争のための武器として有効に利用できるような形態的な適応の方が優先しているように思われる。

 ところが,ホ乳類のレベルまで上がってくると,食性が拡大することで,咀嚼器官の構造と顎運動様式が複雑になってくる。

 とくに人類では,咀嚼器官である歯を,捕食のための手段とか,種内・種間における闘争のための武器としての役割から解放した。

 このような歯の持っている咀嚼器官以外の側面的役割は,多くのホ乳類,高等な霊長類ですら捨て切ることができなかったものである。

 人類におけるように咀嚼器官である歯がその側面的役割から解放されたことには,生物学的にきわめて重要な意味をもつと考えられている。その結果,咀嚼器官の発達にさらに拍車がかかり,人類の食性の幅が広がったのである。

200708a.jpg


2008-07-08 16:47  nice!(2)  コメント(1)  トラックバック(0) 

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コメント 1

mustitem

勉強になります。
by mustitem (2008-07-10 13:39) 

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